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汎化作用

三鷹教室

先日、2年間使用していたスマートホンが故障した。

症状は、3パターンほどあり、①起動画面(端末の製品名表示)からすすまないフリーズ状態、②起動画面後、緑の画面に小さな英語がいっぱい(PCでいう魔のブルー・スクリーン)、③起動画面後、真っ黒になりまた起動。いわゆる「ブートループ」というやつ。

素直に修理に出せばいいのだが、修理サポートセンターに電話したところ、起動しないので基板交換か機種交換になり、①電話番号などアドレス帳が消える②写真や音楽などデータが消える、とのことなので(バックアップをとっていなかった)、どうにかならないかとネットで調べた。データだけでも取り出したいと考えた。

思い入れや熱さの違い。修理センターのオペレーターにとっては数ある故障問い合わせのひとつであろうが、「データは無理でしょうけどとりあえず送って下さい。代わりのスマートホンを送りますから。」と言われても素直に、はい、と言えなかった。連絡しようにも連絡できない知人の電話番号やメールアドレスをどうやって入手するかは難しいし手間がかかる。写真には思い出もある。バックアップを取っていなかった自分にも非がある。

キャリア(携帯電話の通信サービスを提供している会社)以外の修理専門会社に頼むと、直る可能性もあるが、数万円の費用がかかるので最後の手段と考えることにした。

1日半格闘し、充電池の抜き差し、SDカードやSIMカードの抜き差し、パソコンとの接続、シークレット操作によるセーフモード起動や工場出荷時の状態へのリセット、ふりふりする、祈る、泣きつく、逆切れ、たたく、そして謝罪、などを試したが、改善せず。

実は半年ほど前、自宅のタブレットが充電できなくなったとき、分解して、ハンダを溶かして電源ソケット部品をはずし、同系パーツを取り寄せ交換して自力で修理できた経験があった。パソコンの分解・修理は頻繁に行っていたので、タブレットも分解してみたら、パーツ構成やケーブルの抜き差しは、超ちっちゃい以外は似ていて(老眼には厳しい作業だった)、なんとなくわかった気分になっていた。

同じアンドロイドだし、スマホはさらにちっちゃいだけだろう、と考え、極小のYドライバー(プラスやマイナスでは分解できない)を購入し基板レベルまで分解してみたが、これといって故障個所(部品の劣化・欠損など)は見当たらず。

あきらめの悪い僕(石神)は、さらにネットで調べた。するとネットの住人たちの何人かがこう書いていた。

『電子レンジでチンすると直る』

はぁ? いやいや、まさか、からかっとんのか、こっちは真剣にデータ救出を考えてるのに、冗談はやめてよ、とやや怒り気味にさらに検索していると、

『フライパンやホットプレートで焼く』

『アイロンを押しつける』

と出てくる。

うーん。

ネットの住人達はこう会話している。

『1回成功!2回文鎮化』

『プレステ3やその他含め、俺は3勝2敗』

この時点で、起動ループ状態になってからまる2日。一瞬起動しかけて、似あわないガッツポーズをしたこともあったがやはりループする。知り合いの人たちにも迷惑がかかっているのではないかと焦っていた。(実際迷惑をかけた。)

あ、と思って故障センターに再度電話して、分解してみたけど、と伝えると「保証対象外になりそうですね」と。

さらに2時間ネットで調べて悩んだあと、どうせデータが取り出せないなら、どうせ起動しないなら、文鎮化してもいいからと、アイロンを選択し、実行した。

レンジでもなく、フライパンでもなく、アイロンだった理由は、「自らの手で」感が強く、失敗した時の責任を負いやすく感じたからだ。

CPU・GPUなどの電子部品は熱に弱い、が僕の認識だった。加熱などもってのほか、むしろ冷蔵庫にいれたほうがいいのではと考えるくらいだった。ネットで検索中にわかったことは、

①分解して基板のみ焼く。
②電子レンジではなくオーブンレンジで200℃で5分加熱する。アイロンでも200℃。
③その後ドライヤーで冷却する。

少し理論がみえていた。

基板とパーツをつなぐハンダが劣化し接触不良を起こしているから、ハンダが溶ける温度、かつ、パーツが故障しないギリギリの温度「200℃ぐらい」で加熱し、ハンダを溶かして再度くっつける。

「ハンダ・クラックのリフロー」

というらしい。(後にわかったことだが「フラックス」という液体をハンダ部分に塗ると再結合しやすいらしい。)

【 思いがけず長くなってしまったので、ここで、『みなさんも、同じ症状の際には是非試して下さいね。では、ごきげんよう。』で終わらせてみたり、また、『続きは次回』にもしてみたが、たいした効果は得られないかと思い、やめるのをやめた。最後まで書ききることにした。 】

熱くなったアイロンをおそるおそる基板に近づけた。緑の基板が熱で溶けるような気がしたが、CPUと思われる黒い四角いICチップにアイロンをあててみた。数秒で離した。ネット住人がいうように5分なんて無理だ。自分の決意がゆらぐ。が、このままではスマホのためにも自分のためにもならないと考え、再度アイロンをあてる。実際10秒ぐらいだろうが、自分には1分ほどに感じた。アイロンを離し手で触れてみるとかなり熱くなっていた。さっそくヘアドライヤーで冷却しパーツを組み立て直し、起動。

動かない。むしろ後退。画面右半分が黒、左半分が緑とオレンジが混じったメロン色になった。加熱が影響を与えることはわかった。

再度分解。今度は決意してアイロンをあてる。頑張って50秒ぐらい。手で少し触れてみたが、触り続けられないほど高温になっていた。冷却して組み立て。起動。

動かない。ただ、メロン状態は改善し、もとのフリーズ状態。メロンは焦ったので少し安心した。

再度分解。決死の覚悟で1分半のアイロン。しかも基板の3分の1ぐらいに触れるように。コンデンサや抵抗など他の精密部品の上も覆う状態でアイロンをあてた。基板の下は木の机なので溶ける心配はない。ただ基板と電子部品が熱に耐えられるのか、アイロンを直接あてて本当に正しいのか、いろいろなことを考えた。冷却後組み立て。起動。

ん? 起動時の製品名ロゴのあと、キャリアのロゴが見えたところで再起動。この二日間、製品名ロゴより先には進まなかったのに。冷静さを保とうとするが手が震える。心も震える。

再度分解。先ほど、かすかな光が見えたので、気持ちばかり焦りだす。まさか直るのでは。この二日間の苦しい戦いが報われるのでは。アイロンをあてたり少し離したりを3分繰り返す。今こそ慎重になるべきだ。いつもそうなのだが、ネガティブ志向の僕は、上手くいくのではないかとはしゃいで失敗した後にがっかりすることを本能的に避ける。

今度も同じく、製品名ロゴ、キャリアロゴまで。

小心者の僕はここでやっと覚悟した。いいよ、わかったよ、やってやるよ。

分解、そしてアイロン加熱。いままでよりも広範囲に直接あてること4分半。5分じゃないのは握力がもたなかったから。アイロンをあて続けながらなぜか泣けてきた。職人なみの早さで組み立て、起動。

製品名ロゴ、キャリアロゴ、その後、スマホが見たことない光を発した。

 

「おめでとう」  「さようなら」

 

ふたつの声が同時に重なって聞こえ、二日ぶりにホーム画面が現れた。

 

 

【 追記1。1日半後、また起動ループ状態に。慣れた手つきでアイロン後、復活。また半日で起動ループ。現在はこれを繰り返している。データは動いているうちに数回に分けて救出したはずだったが、まだ全部移行できていない。アドレス帳に登録してある方々には起動ループ中やデータ移行中に迷惑をかけた部分があり、後日言い訳含め謝罪の予定です。今回ブログに書いたのはこんなびっくりな方法もあるといいたかっただけで、よい子のみなさんは真似しないように。あと自己責任でお願いします。 】

【 追記2。修理センターのオペレーターさんとのやり取りを通じて感じたこと。電話の向こうのオペレーターさんは、修理・故障受付のプロであり、慣れた口調での「応対」だった。自分は生徒にどう接しているだろうか。20年この仕事をしているので経験値が上がり生徒に科目をわかりやすく教えることはできるし、わかったと言ってくれることは嬉しい。点数とってくれれば嬉しい。合格すれば嬉しい。経年による慣れからくる「当たり前感」を出さずに、生徒からすれば初の導入授業に対し、どれほど生き生きとライブ感覚で新鮮な気持ちで伝えられているだろうか。音楽のライブやコンサートもそうだろう。客はその時を心待ちにしているのだ。同じ曲でもマンネリを回避するためにアレンジを変えたりMCでつないだり。ただ、この塾講師という仕事は生徒と直接対話ができる。表情が見える。オペレーターさんには本当に困った僕の表情はわからない分、生徒の顔が見えるこの仕事の方が相手の気持ちをくみ取りやすい。個別指導はなおさら目の前にいるからわかりやすいが、集団授業は個々の表情を見て一瞬で気持ちを察するのは難しい。経験によりクラス全体の雰囲気の把握はできるが、置き去りになっているかもしれない生徒を感じ取るアンテナを常にONにすることも大事だ。コンサート会場における客全体の盛り上がりでコンサートの善し悪しはわかるが、中には乗り切れていないお客さんもいるのかも。
やはりオーブンレンジではなく、アイロンで直接触って熱したい。フライパンではなく、アイロンで直に触っている手応えを感じたい。熱を直接伝えたい。誰かに貢献できているという充実感を直接味わいたい。 】

【 追記3。また、試行錯誤のあとの分解・組立、そしてとりあえずの成功を通じで感じたこと。やはり慣れの善し悪し。分解組み立てに慣れて技術は向上したしうまくいくのだが、直ることがわかってしまうと、その後はルーティーンになりわくわくドキドキする興奮が減った。「当たり前」になってしまっていた。何とかしようと試行錯誤し技術が身につき、自分の努力が報われるのではないかという期待感が高まり、また上手くいきつつあることが実感できているときが楽しい。慣れて経験値でやっていけるようになると、新鮮味が薄れる。自分は年齢を重ねるが毎年入れ替わる生徒は年をとらないので、年齢格差は大きくなる一方で、不安になるし、経験を積んだ分の生徒との心の距離も開いていくのではないかと不安になる。
あと、話はそれるが、やはり成功体験は大事だ。パソコン修理→タブレット修理がうまくいった経験とその喜びがあったからこそスマホ修理にも意欲がでた。やる気が出た。生徒も成功体験がないとやる気も出ない。上手くいくまで生徒と一緒に「分解・組立・新たな試み」を根気よく続けて、「やった、でけた!」の喜びを共に味わえるか。いつまでも補助輪つけて練習させるわけにもいかないから、どこかでこっそりと手を離すのも大事。また、補助輪でなく、指導者がいつまでもハンドル握って操っていてもよくない。多少、転んでも自分の力で進んでいけるようにするのが指導者であり、大きく道を外れたり、大怪我しそうになったらサポートは必要だが、それ以外は、うしろで補助し、こっそり手を離してあげたい。
話を戻そう。経験値上昇・技術力向上によるマンネリを払拭するのは、当然ながら自身の向上心。ただ、その向上心を引き出してくれるのは、生徒からもらえる楽しさやエネルギーだ。それらを享受するには、楽しいと感じられる自分自身の心の健康状態を整えることが必要。そのために仕事周辺の環境を整えたり整えてもらったり、日常生活が充実するようバランスを考えたり考えてもらったり。
まずは生徒たちの反応に呼応できる自分がいるか。長期間その反応に呼応できる自分を維持する根拠となるものがあるか、または築き上げてきたか。仕事に対する献身と自己研鑽は大前提。次に、生徒の反応に講師が長期間呼応し続けるには、講師側の心と体の健康度による。ライフ・ワークバランスが(個人のダイバーシティ[多様性]が尊重される中で絶妙に)釣り合っていないといけない。仕事上の自己研鑽は必須だが、ある一定レベルに達した後は、生徒に映し出される『仕事力以外の人間力』を磨きたい。生徒寄りの性質を帯びた人間力がほしい。多感な生徒は講師の科目力・授業力以外の、授業中や言葉の端々ににじみででくるであろう人間性に敏感に反応する。充実した日常生活を過ごし、その中で複数のアンテナから受信した内容や、充電したエネルギーを、直接的な言葉や態度でなくてよいのだが仕事や授業に転化させることができれば。意識的にも無意識にも。

以上、長くなりましたが、よい子の皆さんは真似しないように。上記すべて自己責任でお願いします。 】

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