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三つ国の魂、百まで

新川教室

こんにちは。
新川教室の𠮷田です。

誰しも、子供の頃ハマったものがありますよね?
子供の頃といっても、年齢や環境によってその対象は変化するものですが、
中学生のときに絞ると、僕の場合それは『三国志』一択になります。

父親が集めていた横山光輝の漫画『三国志』を、ある日ふと手にとり、
何気なく読み始めたのが運の尽き。
全60巻の大作をあっという間に読破し、その後も2周3周とリピート、
そのうち漫画だけでは飽き足らなくなって、KOEIのシミュレーションゲームをやり込み、
その攻略本を主要キャラのステータスを暗記するほど熟読した挙句、
吉川英治の『三国志』(横山光輝が基にした小説)、
果ては、羅貫中の『三国志演義』(吉川英治が基にした中国の小説)にまで手を出す始末……

うーん、どっぷりハマってますねえ、こうして振り返ると。

 

すごいと思うのは、“三国志” というコンテンツが、
時代の変容に合わせて姿かたちを絶えず変化させながら、
今なおサブカルチャーとして堂々とその地位を確立していることです。

日本のステレオタイプな三国志像を良い意味でぶち壊した『蒼天航路』(漫画)。
物語の凋落によるキャラ偏重の時代を先取りした『三國無双』(テレビゲーム)。
トレカブームの波を見事に乗りこなした『三国志大戦』(アーケードゲーム)。

例を挙げればきりがありませんが、このように三国志は常にその存在感を
サブカルチャー界にあって示し続けているのです。

 

そして今、そのことを痛感させられるのが、アニメ『パリピ孔明』です。
西暦234年に死亡した諸葛亮孔明が、どういうわけか現代の日本は渋谷に転生し、
劉備玄徳ならぬ月見英子というヴォーカリストをトップアーティストへと押し上げるべく、
様々な権謀術数を巡らしプロモートするというお話。
昨今、隆盛を極める “異世界転生もの” のようで、そうでないのがポイントです。
ふつう異世界転生とは、
現実世界(リアル)から異世界(ファンタジー)へと転生するものですからね。

作中で孔明は、そのポテンシャルの高さを遺憾なく発揮し、
スマホやSNSなどの現代的テクノロジーを巧みに使いこなします。
(張飛はもちろん、関羽でも無理だろうなあ……)
一方で、「泣いて馬謖を斬る」とか「石兵八陣」とか「水魚の交わり」とか、
三国志ファン垂涎のワードたちも随所に散りばめられ、
なんというか、実にツボを押さえた秀作だなあと思わされるわけです。

「パリピ」(現代+低脳)と、「孔明」(古代+ハイスペック)という対照的なペアリングは、
アイスクリームの天婦羅のように、
新しい味わいの地平を切り開いてくれる可能性に満ちているような気がします。

 

とはいえ、その魅力の根底にあるのは、やはり「三国志」という物語と、
その世界を彩る個性豊かなキャラたちの織り成すドラマに違いありません。
実際、「パリピ孔明」第3話において、
孔明がかつて仕えた劉備玄徳の幻に向かって、「我が君……」と呟くシーンなど、
たったそれだけのことなのに、思わず泣きそうになりました。
この現象は、「三顧の礼」「天下三分の計」「入蜀」「漢中王」「夷陵の戦い」、
といった文脈を知らなければ起こりえないことです。

三国志というコンテクスト──
1800年もの年月を生き延びてきたその実力は伊達じゃないのです。

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