価値観をひっくり返す
こんにちは。
新川教室の𠮷田です。
去年、連載が終わってしまった漫画ですが、
『ランウェイで笑って』を読んでいます。
アニメ化もした作品なので、
ご存知の方も多いかもしれません。
身長わずか158㎝のモデル、藤戸千雪をパリコレモデルへと押し上げるべく、
才能以外なにも持たないデザイナー、都村育人が奮闘するお話。
物語のハイライトは、「モデル=高身長」とか、
「ランウェイ=クール(笑わない)」という既存の価値観にとらわれず、
低身長でもいいし、笑ってもいい……
を一足飛びに越えて、
低身長だからこそ、いい!
笑うからこそ、いい!!
──という新しい価値観を創出しようとする、
いわばファッション界におけるコペルニクス的転回のうちにあります。
とりわけ、僕が感心したのは、
都村育人の立ち上げたブランド「EGAO」
彼のモットーは「着た人が笑顔になれる服」ですから、
まあ、尤もといえば、尤もなブランド名なのですが、
秀逸なのは、そのロゴ––
EG∀O
Aがひっくり返って、∀になっているところです。
どうですか?
なんとなく、ロゴが笑っているように見えませんか?
アスキーアートにおけるそれは、
( ̄∀ ̄)とか、( ^∀^)とか、(о´∀`о)とか、
まさに “笑顔の記号” といって差し支えないでしょう。
記号は、言語の壁を軽々と超越します。
記号は、あらゆるギャップを超克します。
記号は、新しい価値体系を彫刻します。
ジャン・ボードリヤール(フランスの哲学者)曰く、
現代の消費は、記号としての消費である──
作中で説明こそされませんが、
ロゴの中のちょっとしたひと工夫に、
登場人物の──ひいては作者の──理念が垣間見える、
そんな一瞬が、漫画を読む快感のひとつです。