新着情報

水曜日は映画が安かったりする

新川教室

こんにちは。
新川教室の𠮷田です。

先日、うだるような猛暑の中、
映画『プラン75』を観て来ました。

75歳以上なら誰でも、自らの意志によって、無条件で政府公認の安楽死を得られる──
という法案が成立した世界を描く、
日本の超高齢社会を真っ向から見据えた作品です。

この作品の設定を知ったとき、そのテーマはきっと、
『プラン75』の合理性 VS 人命の尊厳
といったような、良くも悪くもメッセージ色の強い、
ゴリゴリの社会派ドラマじゃないのかと想像しました。

しかし蓋を開けてみると、物語の展開は、
社会的・制度的批判というベクトルではなく、
社会的な繋がり──家族、友人、仕事といった、本来的な意味でのソーシャルネットワーク──を失った個人が、それでも生きる意味はあるのか?
というような、生そのものに対する、より根源的な問いを投げかける方向へ進むのです。

問いを投げかける、といっても、決して強圧的にではなく、
あくまで慎ましく、比喩的に囁かれるので、
鑑賞者は皆、自分なりの解答を模索しつつ、
自然とその答えを作中に求めることになります。

もちろん、多くの芸術作品がそうであるように、
提起された問題に対する明確な解答は提示されません。
──が、ラストシーンが、これでもかというほど鮮烈に輝く夕日だったことは、
この作品のハイライトとして心に留めておく必要があるような気がしましたね。

この映画が、静謐ながらも味わい深い作品に仕上がっているのは、
なんといっても主演女優・倍賞千恵子の演技によるところが大きいと感じました。
評して、圧巻 のひと言に尽きます。
圧巻といっても、凄味があるとか、迫力があるとか、
そういった類の演技力ではありません。
「老い」や「孤独」、そして「死の誘惑」と「生への執着」……
これらの狭間で揺れ動く高齢者の機微を、
実に自然に、それゆえリアルに演じ切っていらっしゃったのです。
(リスペクトが過ぎて、思わず敬語に)

『ハウルの動く城』で主役のソフィーを演じた時はどうかと思いましたが、
(ハウルファンおよび倍賞千恵子ファンの方々、申し訳ありません)
今回の千恵子は、掛け値なしに素晴らしかった!
(興奮のあまり、思わず呼び捨て)
ぜひとも今年の日本アカデミー賞で、
およそ40年ぶりの最優秀主演女優賞を獲って頂きたいものです。

 

灼熱の真夏日に、寒いくらいに冷えた映画館で観る、良い映画、良い演技。
いやー贅沢ですね。
夏の映画はアニメと決め込んでいましたが、実写もなかなかどうして。

アニメといえば、気になる新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』、
今秋11月11日公開だそうです。

2016年9月以前のブログはこちら

ページトップへ