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セカンドインパクト(エヴァンゲリオンの話ではない)

新川教室

こんにちは。

新川教室の𠮷田です。

 

昨日、『天気の子』が地上波で放送されましたね。

とある島(おそらく小笠原諸島のいずれか)から家出してきた16歳の少年「帆高」と、

祈ることで小さな晴れ間を呼ぶことのできる自称18歳の少女「陽菜」をめぐる物語。

新海誠の最新作『すずめの戸締まり』の公開に先駆けて……

とのことでしょうが、

3年ぶりに鑑賞することと相なりました。

 

『ほしのこえ』
ああああ
『雲のむこう、約束の場所』
ああああ
『秒速5センチメートル』
ああああ
『言の葉の庭』
ああああ
『君の名は。』
ああああ
『天気の子』

 

新海誠の系譜をたどってみると、

「恋愛成就の不可能性」へのチャレンジ──

言い換えれば、

「想いは相手に届くのか?」という根源的な問いに対する、

長大な考察レポートのように思えます。

 

彼の作品群において、恋愛の成就は様々なものによって阻まれます。

・物理的(空間的、時間的)な隔たり

・宿命的な記憶障害(喪失)

・年齢や立場にまつわる社会通念

記録的大ヒットを遂げた『君の名は。』においても、それは例外でなく、

瀧と三葉の最終的な結びつきも、観客から見れば二人の恋愛が見事に成就したかに見えますが、

当人たちにとっては「想いが届いた」とは決して言いえぬ状況で幕が閉じます。

 

新海誠の用意する “恋愛成就阻害ファクター” は、

どの作品においても「世界の成り立ち」と巧妙に重ね合わされていて、

原理的に回避できないようになっていました。

(新海作品の魅力はまさにこのことに尽きると𠮷田は考えます)

 

ところがです。

『天気の子』でついにその原理が破られるのです。

 

「世界」が僕たちの想いを阻むのなら、

「世界」の形を変えてしまえばいい──

 

「世界」を犠牲にすることで、帆高と陽菜は、自分たちの恋愛を成就させてしまうのです。

なるほど、その手があったか!

──と、映画館でバカみたいに感心したのを覚えています。

まさに〝セカイ系″だなあ、と現代の若者たちの実存を目の当たりにした思いでした。

当時、新海誠は46歳でしたが、よく聴くアーティストは?との質問に、

ヨルシカナナヲアカリ

って答えてましたからね。

いやあ、さすがです、新海監督。

十代に響く作品が作れるわけですよ、そりゃあ。

 

……などと、当時の感心を振り返りつつ、3年ぶり2度目の鑑賞をしたわけですが、

やはり2度目となると、初見のときより細かいところに目が届くものですね。

 

冒頭からこの風景が描かれていたのかあ……とか、

帆高が読んでいる『The Catcher in the Rye』は村上春樹訳かあ(野崎孝訳読めよ)……とか、

三葉のネームプレートは「Miyamizu」だから、瀧と結婚してはいないんだなあ……とか

 

ってな感じで鑑賞を続けていたのですが、

……ん?

……あれ?

……待てよ?

よくよく考えたら、この二人って、

 

世界の形を変えてなくない!?

 

そーなんです。変わってないんですよ、世界は別に。

冒頭から「僕たちは、世界の形を変えてしまったんだ……」って連呼するもんだから、

完全にそう思い込まされていましたよ。

いやー、すっかり騙された。

むしろ変わろうとしていた世界が、二人の決断によって、

元の形に戻ったっていう話なんですよね、きちんと整理すると。

 

誤解のないよう、念のため付け加えておきますが、

二人が変えたのは、「世界の形」じゃなくて、「世界との契約」なのです。

なんていうか、“聖書を破り捨てた” みたいな感じですね。

だから実は、セカイ系のようでいて、セカイ系と簡単には括れない、

そういう稀有な作品に仕上がっている。

だから最後のセリフが、「僕たちはきっと大丈夫だ!」などという、

無根拠で頼りのない、それでいて力強いものになったのでしょう。

「世界」そのものが二人の都合に合わせて形を変えたのではなく、

「世界との契約」を一方的に破棄することによって、辛うじて成就した想いなのですから。

 

いやはや、ようやく成就した(かに見える)恋愛も、

契約破棄という形で成立した危ういものでしかないという……

うーん、さすがは新海誠、そう言わざるを得ませんね。

 

はたして最新作『すずめの戸締まり』において、

「すずめ」と「草太」の想いは届くのか?

そして前々作、前作と相次いだ、「前回のメインキャラゲスト出演」は今回もあるのか?

いやー、今週末が楽しみです!

 

 

楽しみといえば、明日11/8は皆既月食ですね。

19時過ぎから1時間半ほどの間観測できるそうです。

授業の合間を縫って見てやろうと思っています。

 

今のところ、三鷹市の夜の天気は晴れの予想。

しかし、たとえ天気が崩れても問題ありません。

そんなときは「100%の晴れ女」に依頼すればいいのです。

依頼料はたったの3,400円。

うん。

きっと大丈夫。

 

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