人気漫画にみるポストモダン
こんにちは。
新川教室の吉田です。
葬送のフリーレン。
魔王を倒した勇者が亡くなったその後の世界を描く、少年サンデーに連載中の人気漫画です。
主人公は、勇者パーティーの魔法使いであるエルフのフリーレン。
エルフは大変な長寿なので、人間の勇者よりずっと前に生まれ、ずっと後まで生きます。
ドラクエにどっぷりハマった世代の僕は、最初はあまりピンときませんでした。
だって勇者が魔王を倒す過程こそが面白いのであり、
その後のアフターストーリーなんて蛇足そのものだと思っていたからです。
しかし、そう感じながらも読み進めていくうちに、ある思いが芽生え始めました。
このお話って、ポストモダニズムそのものじゃないか!と。
勇者が魔王を倒して世界に平和がもたらされるという「大きな物語」が終焉し、
その後の “目的なき生” 、言い換えれば “無意味な生” をどう生きるか──
それはまさに、リオタール(フランスの哲学者)が喝破したように、
近代的理性あるいは理念という「大きな物語」の崩壊した、
無目的で無意味な時代を生きる……あるいは生きなければならない我々への、
含蓄ある提示と解釈することが可能です。
日本で「大きな物語」が崩壊したのは、ソ連が解体し、
バブルの弾けた1991年(吉田独自の見解です、あくまで)ですから、
『葬送のフリーレン』の連載開始(2020年)は、その29年後になります。
そして『葬送のフリーレン』の描かれる舞台は、
なんと勇者が死んでから29年後の世界なのです。
この奇妙な符合は、偶然なのか必然なのか?
今後のフリーレンから目が離せません。