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飛ばし読みをするこどもたち。

武蔵小金井教室

 

 

内田樹『下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉』『ためらいの倫理学』

で取り上げられている

「無純」をめぐっての、学力崩壊の危機感のエピソードは、

 

 

地域の進学校の読書リストでも見かけたことがあり、高校受験でも取り上げられたので、

 

 

国語教育に携わる人間なら誰もが知っていると思われる

 

「『二十一世紀の若者』が置かれた『知的状況』」です。

 

 

いわく、

 

文字が読めないことを不快や不足として感じず、

読めない文字は無意味な「汚れ」として「飛ばし読み」するという習慣

を過剰に骨肉化している、という状況です。

 

 

 

こんにちは。

武蔵野進学セミナー武蔵小金井教室の川原です。

 

 

 

国語教育の現場にいる人間として理解していることは、

国語が苦手なこどものいちばんの原因は、

速読ができないことではなくて、音読ができないことにあるということです。

 

つまり、読めない文字がいっぱいありすぎて、

読めない文字を飛ばしてつなぎ合わせているので、

そもそも文章として読むことができないのです。

 

だから、

ひとつひとつの言葉の意味を噛んで含めるように音読で読み合わせをしていくことが、

国語の授業の基礎訓練となります。

 

そんなこどもたちが、

制限時間内にいま読めるだけの速度以上にたくさんの文字数を読め、

と急かされても、

今以上に、わからない文字の羅列の上を目線が上滑りしていくだけになるでしょう。

 

 

 

事態がいっそう深刻だと思えることが、先日ありました。

 

 

外部模試が返却されるごとに、

 

表面的な点数や偏差値よりも、

わたしは、生徒ひとりひとりが作った解答が気になるので、

 

一枚一枚、丁寧に眼を通し、全体の傾向と併せながらも、

 

「この子が得点できなかった理由は何だろう。」に思いを馳せます。

 

 

そんななか、

国語の点数じたいは上位層の点数をとっているある生徒の解答を手にとったときに、

「ひょっとすると。」と思ったのです。

 

 

読解の記号選択肢問題の正答率は高いのに、漢字がぼろぼろ。

 

 

本人に聞きに行きました。

すると、返って来た答え。

 

「意味が分からない漢字は、読み飛ばしています。

だから、漢字は、苦手です」。

 

 

言葉の意味を知らずに済ませ、「飛ばし読み」をするのは、

なにも国語を苦手とするこどもたちだけではないのです。

 

 

では、問題文に出てくる漢字が読めないのに、それでも記号問題に正解できるのはなぜか。

 

その生徒から話をよく聞いて、わたしが推測したこと。

 

それは、

意味がわからない言葉があっても「読み飛ば」し、

前後の論理関係と文脈、そして問題の選択肢の内容との整合性を考えて、解答しているということでした。

 

それはそれで、試験中の処理のしかたとしては、賢明だといえます。

 

 

しかし、「読めない漢字は、読み飛ばしています。」と答えたその生徒は、

国語の試験中だけではなく、ふだんから「読めない漢字は、読み飛ばす」習慣だということ。

 

 

ある程度のレベルの国語の問題や、ある種の資格検定は、

 

問題文を理解しなくても、

その問題に応じた解法を駆使するという情報処理の方法だけで正答できることは、

 

わたしも知っています。

 

 

しかし、一定以上のレベルの国語の問題、

そして、言葉の意味そのものを問題にする高校現代文や大学受験では、通用しません。

そのときに、言葉の意味がわからないことを不安、不足と感じることを経験してこなかったこどもたちは、

 

じぶんたちの学力崩壊に初めて気がつくことになるでしょう。

 

 

実際、

毎年わたしが担当する大学受験生たちに、

現代文単語でも英単語でも、

あれも知らない、これも発音できない、といったことを

ひとつひとつ教えていくだけで貴重な授業時間が費やされていく

のを経験しています。

 

ほんとうにたいへんです。

 

 

ことし、国語に携わる人間として、

クラス授業で、こどもたち全員の国語力を底上げすべく、

さまざまな施策をすでにはじめています。

 

 

目の前の文字情報とゆっくり向き合って、

それが何を意味しているのか、

ひとつひとつ丁寧に理解していくこと。

 

そんな当たり前のことを実践させるべく、

「読む」ことができない生徒は、

授業内・模試で一定基準を下回った場合、

授業外でどんどん呼び出して、「読む」訓練をさせていきます。

 

 

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